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袴田さん事件58年 なぜ死刑囚にされたのか

 また一つ、再審開始になるのか――。

 静岡地裁が再審公判で袴田巌さん(88)に無罪を言い渡した26日判決からさかのぼること、約40年前。静岡地裁の裁判官だった熊田俊博さん(75)は、袴田さんの死刑判決の裁判記録を読みながら、そう直感した。

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静岡の有名事件で「再審開始」も経験

 1981年に袴田さんが1回目の再審請求を申し立てた2年後に、静岡に着任。その後、袴田さんの案件を含め、二つの事件の再審請求を審理した。

 一つは、54年に県内で起きた幼女誘拐殺人事件。後に「四大死刑冤罪(えんざい)事件」の一つと言われる「島田事件」だ。死刑判決を受けた男性の4度目の再審請求で、東京高裁が83年、審理を静岡地裁に差し戻す決定をしていた。

 熊田さんは他2人の裁判官との合議で、「再審開始」と結論づけ、決定文の原案を書いた。

袴田さんへの判決、読んで得た心証

 並行して、袴田さんの事件にも時間を割いた。記録などに目を通すと、重要な証拠の一つひとつに、次々と疑問がわいた。

 凶器とされたのは、刃渡り約…

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